Boris with 栗原ミチオ Special Interview vol.1
このインタビューはBoris with 栗原ミチオ 単独公演(2018年12月29日"不透明度"at新代田FEVER)直前に行われたものです。
Borisが“一番ミチオを酷使するバンド”って自負してる(笑)
—まずBorisと栗原さんが「また一緒にやろう」となったのはどういった経緯だったのでしょうか?
Atsuo:2017年から2018年にかけてBorisの25周年ワールドツアーをずっとやってて、ファイナルを東京でやろうということになった時に「スペシャルゲストとして栗原さん、また一緒にやってくれないかなぁ?」って、そんな感じでしたよね?
Michio:うん、そんな感じだった。
Atsuo:栗原さんは2018年、高円寺のUFOクラブでライブを1回やってて。マニ・ノイマイヤーさんと。
Michio:2018年の4月だったね。
Atsuo:そのマニさんのライブの時に栗原さんが久しぶりにギターを弾くってことでみんなで観に行って、久々に会って。2018年はDamon & Naomi[*1]とも一緒にやってましたよね?
Michio:そう、確かその時Borisは全米ツアー中だったよね?Damon & Naomiとは2年ぶりだったけど、すごく楽しく演奏できたんで、みんなにも観て欲しかったなぁ。
—UFOクラブでの再会時は「また一緒に」という話はあったのでしょうか?
Atsuo:うーん、その時は「一緒にやろう」とか考えずなんとなく観に行ったような気がするんだけど…。
Takeshi:「いつかやりましょう」的な感じだったかな?
Michio:うん「いつかやりましょう」的な、まぁ社交辞令的な感じともとれるような…。
一同:(笑)。
Michio:でも、あの時はみんなそろって観にきてくれて、嬉しかったですよ、単純に。2018年のDamon & Naomiのライブ以降に、ドラムを入れたバンド形態でやったのは初めてで。もうね、6年ぐらいリズム隊入りではやってなかったから、「できるのかな?」とか思ったけど。だから、あの(マニ・ノイマイヤーとの)セッション以外だったら、バンド形態で参加するのはすごく久しぶりですね。
"不透明度" Boris with 栗原ミチオ ワンマン (2018.12.29)
Atsuo:UFOクラブのライブの後に「(栗原さんのギターを)もっと聴きたい」ってなって。あの時って栗原さんがメインでガンガン前にくる感じじゃなかったんで、もっと「ミチオ〜!」って言いたいってなって。
Michio:なんか物足りない感があったような顔してたよね。
Atsuo:Borisが“一番ミチオを酷使するバンド”って自負してるんで(笑)。
Michio:酷使(笑)!!
Atsuo:ミチオの(ギタープレイの)引き出しを開けまくる。優しい音から、エグい、殺しにかかってくるファズギターまでね。
でも出演していただいたのが“Boris 25周年”っていう意味合いがメインのイベントだったから、そんなに一緒に演奏もできなくて。その時は2曲だけ、“ ”と“虹が始まるとき”をやったんだよね。まあ“vein”も入ってるけどね。
Takeshi:25年の活動の中で6年、栗原さんにサポートで入ってもらってたっていうこともあり。
Boris with 栗原ミチオじゃなくて、 栗原ミチオ with Boris
—久しぶりに一緒に演奏していかがでした?お互いの変化を感じるところはありましたか?
Atsuo:すごく嬉しかった、リハーサルから。
Michio:Borisは変わってなかったね、良い意味で (笑)。逆にこっちが不安ではありましたね、ブランクが長かったんで。「できるのかな?」みたいなね。
Atsuo:あのとき(25周年ファイナル)は2曲だったんでね。
Michio:今回の方が「できるのかな?」って感じがする。
Atsuo:できてるじゃないですか(笑)。
Michio:そうか(笑)。いや、あんまりできてないと思うよ。確認作業をしながらやってたりするから。以前ツアーで散々やった曲もあるんだけど「あれ?どういうセッティングだったっけ?」って段々思い出していく。
"不透明度" Boris with 栗原ミチオ ワンマン (2018.12.29)
—Borisから見た、久しぶりの栗原さんの印象はいかがでしたか?
Takeshi:変わってないよね。
Wata:うん、そんなに変わった印象はない。
Atsuo:25周年のイベントのときも、全然イケるって感じだったし。
Takeshi:そう「この感じ!この感じ!」っていう。
—実際にライブで共演した後に感じるものはありましたか?
Atsuo:(栗原さんが)ちょっとマイルドに、落ち着いた感じに変化してる?。
Michio:歳も重ねてるから?自分ではよくわからないんだけど。
Wata:私はそんなに“変わった”って印象はなくて。逆に栗原さんがいないとできない曲っていうのがいっぱいあって、それがまたできるのがすごく嬉しかったです。
Atsuo:そうだね。『Smile』、『Heavy Rocks』(紫)、『Attention Please』、『New Album』からの曲は栗原さんが離脱してからは全然やってないよね。
Wata:できないよね。
Atsuo:サポートギターと言いつつも、栗原さんがいるっていう前提で曲作りしてたんで。こっち側が勝手に栗原さんをバンドメンバーとして考えて、曲のアレンジを詰めていたから。
—今回のライブでは、栗原さんがBorisにサポートで参加という形ではなく、”Boris with 栗原ミチオ” 名義になっているのは、そういった意味合いが強いのでしょうか?
Atsuo:『不透明度』というライブアルバムがリリースされるんだけど、これは先日栗原さんの『Sunset Notes』がアナログでリイシューされて、その流れも受けて、ライブ盤の録音素材も出てきたのでリリースしようということに。ライブの名義に関しては一番最初に栗原さんとコラボレーションしたところに立ち返りつつ、ちょっとBorisとは違うバンドとしてやろうって感じで。
今回はBorisの曲もやるんだけど、今後はBorisとは別のバンドとして独立させて動きたいと思ってる。だから言ってみればBoris with 栗原ミチオ じゃなくて、 栗原ミチオ with Boris みたいな。
Michio:いや、BorisはなにをやってもBorisって気がするけど(笑)。
—では今後、栗原さん中心に曲を作ったり、別バンドとしてツアーをするといったこともありそうでしょうか?
Atsuo:うん、でもあくまで4人で曲を演奏するっていう前提でね。ツアーは色々な条件があえばやりたいとは思ってるけどね。
しかし(過去の)ツアーは大変でしたよね?
Michio:あぁ、大変だったけどすごくおもしろかったですよ。今では美しい思い出になりました。
Atsuo:美しくなりました?よかったー(笑)。
Michio:Borisとのツアーは人間関係的にもやりやすくて、それがすごく助かりましたね。
Takeshi:毎日一緒に晩ごはん食べてましたね、栗原さんと俺。「今日はどこでなに食べよう?」とか言って。
Wata:朝は私が毎日ご飯炊いてみんなに配給してました。
Takeshi:栗原さんが離脱してから、俺、晩御飯1人なんですよ(笑)。
Michio:そうだね、あの頃はまず2人で店を探す所から始まって、でも大概ハンバーガーとかになってた。
Atsuo:まあ、またツアーとかに出れたら楽しいと思うし、Borisではできないようなこともやれればいいなと思うね。
A/N【eɪ-ɛn】について
—Boris以外にも活動が増えましたね。
Atsuo:うん、増えたね。A/N【eɪ-ɛn】も。
—栗原さんはA/N【eɪ-ɛn】のライブをご覧になっていますよね。
Michio:A/Nはおもしろかったですよ。2人(TakeshiとAtsuo)が他のバンド でやってるのを観たのは初めてで。森川[*2]さんと一緒のバンドでBorisと共演したことはあるけど。外側から観た時に「なるほどこういう感じになるのか」とかね。
Atsuo:(栗原さんは)森川さんと一緒にYBO2[*3]に在籍してましたもんね。
昔、新宿アンティノックでBorisとYBO2でやったとき、その時初めて栗原さんと会話をしたんじゃないかな?
Michio:いや、その前に法政大学のオールナイトライブの時…たしか夜が明けて、機材を搬出してる時に、駐車場で少し話をしたような気が。
Atsuo:あれ?どっちが先だったんだろ。そのへん記憶が確かじゃないんだけど、まあ色々な縁が繋がってて、森川さんともね。
Michio:そうだね。
A/N【eɪ-ɛn】第一幕 (2018.11.16)
—ちなみにWataさんもA/N【eɪ-ɛn】のライブをご覧になっていますが、いかがでしたか?
Atsuo:「Takeshiのギターの音がこもってる」って、めっちゃ言ってた(笑)。
一同:(笑)。
Michio:あのときダブルネック使ってなかったよね?たしかTeiscoレスポールタイプの…。
Takeshi:だったんですけど、セミホロウボディなんで結構ハウるんですよ。
Michio:見た目かっこいいのにね。
Takeshi:静かな曲だったらすごくいいんですけど、大音量の曲だと音がハウりまくるんでBC Richの変形ギターを弾いてました。
Atsuo:で、Wataの感想はそれだけでいいの?「Takeshiの音がこもってた」っていうだけで。
一同:(笑)。
Wata:うーん…。なんかおもしろかったですよ。
Michio:しかし、あの雪の演出はおもしろかったねぇ。(スノーマシンの)直下にいなくて良かった(笑)。
Atsuo:北島三郎のステージみたいになってた(笑)。
A/N【eɪ-ɛn】第一幕 (2018.11.16)
Michio:あと、会場に入ると、とにかく真っ暗になってたのは、わざと?あれはすごかったね。こんなに暗くて、どこに進めばいいのかわからないというくらい。
Wata:1番最初に、歌詞を書いたビラをまいたときも、音しか聞こえなかったし。
Atsuo:そういえば、なんか会場がめっちゃ暗かったんだよなぁ。
Wata:そう、だからなにかの塊が「バサッ」って落ちる音しか聞こえなくて「なにが起きているんだろう?」と思って。
Michio:そういう演出だったんだね。
Atsuo:栗原さんがいた頃のBorisのライブで、照明さんに完全暗転する注文出したら、メンバー全員からクレームが来て。「手元が見えない!」って(笑)。
覚えてます?
Michio:それって、初期の頃だっけ?
Atsuo:たしか代官山のUNITでやったときかな。
Michio:あぁ、あれは本当に見えなかった。全然見えなくて。
—Boris with 栗原ミチオとして活動していたら、そういった出来事もまた起こりそうですね。
Atsuo:いやーどうかな。わりと小回りのきく普通のバンドになっていきそうな気がするんだよね。
Takeshi:例えば、機材はBorisみたいにびっちり並べなくてもいいし、スモークも焚かない、ゴングもステージに置かない、とかね。そういう演出がなくても成立する。
Atsuo:うん、楽曲メインだね。BorisとかA/N【eɪ-ɛn】はショウでの“体験”のパーセンテージが大きいんだけれども、このバンドはもう少し楽曲メインのやり方になると思うな。
Takeshi:そういう意識が、以前一緒にやってた時と今とでは若干変わってきてるから、さっき出た話での「マイルドになってる」っていうのはいい方向性でもあるんじゃないかな。以前はとにかく「音を前へ前へ」ってガッつく感じだったけど、今は俺たち自身も(楽曲を)落ち着いた、しっとりした雰囲気でプレイしたいとか、リハをしていてもそういうキーワードが頻繁に出てくる。
Atsuo:前は、グラデーションで言ったら「黒10%か100%か」のどっちかしかなかったから。今はちゃんと10〜50%までのグラデーションがある感じかな。
Takeshi:少し色味も付くような感じもね。
—アルバム『Rainbow』でもすでにその気配を感じる気がします。
Atsuo:栗原さんのギターが入るという前提で曲を作ったから、そういう意味ではマイルドな曲、例えば“不透明度”とかも生まれたしね。
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Live photo by Miki Matsushima