Boris with 栗原ミチオ Special Interview vol.2
このインタビューはBoris with 栗原ミチオ 単独公演(2018年12月29日"不透明度"at新代田FEVER)直前に行われたものです。
Special Interview Vol.1
Special Interview Vol.3
ライブアルバム『不透明度』について
—今回ライブアルバムの『不透明度』をリリースしますが、ライブとリリースの話はどちらが先だったのでしょうか?
Atsuo:Boris 25周年の流れの中で「このライブ盤をリリースしたい」っていうアイデアはあって、音源自体のマスタリングなんかは結構早い時期に終わってた。ライブは2019年明けてからやろうかなぁなんて考えてたんだけど、Feverから12/29の日程がもらえたんで。リリース元の中村さん(Pedal Records/Peace Music)とも相談しながら、じゃあライブは年内にやって、同じタイミングでライブ盤も出しましょう、ということになりましたね。
—ライブアルバム『不透明度』に収められているのは、下北沢シェルターでの過去のライブですよね。
Takeshi:2007年。11年前の2月4日、『Rainbow』のレコ発ライブ。
Atsuo:『Rainbow』もリリースから10周年を越えてたよね、気づいたら。
Michio:あぁそうか、そうだよね。
—11年前のライブのことは覚えていますか?
Atsuo:今回の年末ライブに向けて、栗原さんは当時の映像見たり音源聴いたりしてるって言ってましたね。
Michio:そう、なぜか見つかって。「こんなことやってたんだなぁ」って。
あのライブが一番最初だよね、僕とBorisでやったのは。それ以前はBorisとまったくからんではなかったはずですよ。
Atsuo:朝生(愛)さんのレコ発ライブで、栗原さんとWataがゲスト出演したのっていつでしたっけ?
Michio:それはシェルターでのライブの半年後ぐらいですよ。で、それまではバンド感があまり無くて、あくまでも僕がBorisにちょっと加わってます、みたいなね。でもそのあたりからだよね。
Atsuo:だんだんBorisに巻き込まれ(笑)。
Michio:その辺がわりとおもしろくもあり…ギクシャクしてましたよね?今もギクシャクしてますけど(笑)。
一同:ギクシャク?!(笑)。
Michio:いや、その演奏的にね、こう「バンド!」っていう感じじゃないから…。
Atsuo:人間関係がギクシャクしてるみたいな言い方(笑)。
Michio:いやいや、音的な意味でね(笑)。
Atsuo:まあでも当時、栗原さんとはコラボレーションって形でしたもんね。
Michio:そう。当時はあくまでも単発っていう感じで。
Atsuo:そうですね、共作アルバムを出して、レコ発をやってっていうだけで。
"不透明度" Boris with 栗原ミチオ ワンマン (2018.12.29)
Damon & Naomiとのアメリカツアー
Michio:その後Borisのツアーに参加するって話も特になかったよね、あの当時は。その後どうなってたっけ?
Atsuo:そうだ、アメリカツアーに行ったんだ!
Takeshi:2007年の秋だね。Boris with Michio Kurihara Rainbow Tour。
Atsuo:そうそう。Damon & NaomiとBoris with Michio Kuriharaのダブルヘッドラインでツアーを組んで。
Wata:栗原さん、1日2ステージやってましたよね。
Atsuo:あぁ!そうだ。
Michio:あれは体力的に結構大変だったなぁ。僕だけ毎晩2グループ掛け持ちで、連チャンで演奏してましたね。
Atsuo:ダブルヘッドラインだから両方がメインアクトなんだけど、Borisのほうが音量がでかいということでDamon & Naomiに先にやってもらうという順番になった。
Michio:とにかく忙しかったなぁ。ギターの使い分けをどうしようとか、チューニングをどうしようとか、あれこれ考えなくちゃならなくて。Damon & NaomiはレギュラーチューニングだけどBorisはチューニングが低いのでね。
Atsuo:その当時は、栗原さんは板挟みでこっちも立てなきゃ、あっちも立てなきゃで、気を使ってがんばってたと思うよ。しかも出番が多くて忙しいし。
Michio:食事をとるタイミングが難しかったのは記憶にありますね。でも楽しかったし、色々良い体験をさせてもらいました。
—そのツアーでは色々なところに行ったのでしょうか?
Atsuo:(アメリカを)1周したね。あれが栗原さん最初の長いツアーでした?
Michio: Damon & Naomiでもツアーはやってたからなぁ。でも長さではBorisのほうがあったかな。
Atsuo:で、そこから『Smile』への流れになっていって。確か『Smile』のサンプル盤をNYでジム・ジャームッシュに渡したから…『Smile』の後に映画『Limits of Control』[*1]が公開されてるってことだよね(2009年公開)。その後に『告白』も公開されて(2010年公開)、どちらの作品にも『Rainbow』から何曲も使われているし、わりとポロってやったコラボが予想を超えたピックアップのされ方をしてちょっとびっくり。
Boris -25th Anniversary Tour Final- (2018.09.22)
“虹が始まるとき”はWataが初めて歌った曲
—映画『告白』[*2]ではかなりの曲数が使われていましたよね。
Takeshi:(Borisの楽曲も含め)6曲くらい使われてるね。
Atsuo:“Rainbow”はWataが初めて歌った曲だもんね。
Wata:今までバンドで歌なんて歌ったことないのに。
Michio:元々アイデアはあったの?
Atsuo:それまでもWataがボーカル名義の曲はあったけどもVocalistという程のものでなく。でも『Rainbow』を作ったころから、中村さんが手がけている朝生愛さんのような歌の感じとか、小さな音量での演奏とかもおもしろいなと思うようになって。この感じだったらWataも歌えるんじゃないかなって、そのころからこういう方向性も始まって。
Takeshi:俺バージョンあるよね“Rainbow”の。
Michio:え、そうなの?
Atsuo:基本的にどの曲もまずTakeshiバージョンがあって、それをWataが歌うっていうレコーディングの工程があるね。まあ、最初はだれが歌うかは決めないで曲は作るからね。
Takeshi:そう、そこから歌詞を書いてまず俺が歌入れして…ガイドってわけじゃないけど「こんな感じで歌って」っていうイメージとしてWataに渡して。
Wata:キーが変わったりとかするし。
Atsuo:曲によってね。ライブでやるときにキーを変えたりとかもするね。
—ライブアルバム『不透明度』での演奏と、今回のライブでの演奏は年月を経て違った感じになりそうですね。
Takeshi:その当時の勢いだったり空気感はみなぎっているよね、ライブ盤は。ただ、栗原さんもBorisも経年と経験を重ねて「今」の音になっているから、同じ曲を演奏しても雰囲気や印象が変わるのは当然だよね。
—機材に関しては、当時から変化がありましたか?
Wata:機材はだいぶ変わりましたね。
Atsuo:今は使ってるアンプも違うし、使ってる楽器も違うからね。
Takeshi:当時はSGのダブルネック使ってたかな。スタインバーガーのやつは『Smile』のツアーからだね。あんまり記憶がさだかではないんだけれども。
"不透明度" Boris with 栗原ミチオ ワンマン (2018.12.29)
詰めたいクオリティのレベルが上がっている
—現在は年末のライブにむけてリハーサルを重ねていると思いますが、いかがですか?
Atsuo:1歩進んで、5歩さがってる感じ(笑)。
Michio:その通り(笑)。
Atsuo:時間ないね、本当に。今日も休憩なし。7時間リハーサル。
Michio:ここ最近のリハーサルは全然休憩してないよ。
Atsuo:基本6時間ぶっ通し…。これでも全然時間が足りないんだよなぁ。
—ブランクを埋めるような作業なのでしょうか?
Atsuo:いや、詰めたいクオリティのレベルが上がっているというか…それは月日が経って自分たちの経験を踏まえた上で「もっとここまでいける」っていうところも増えてきたから。当時の演奏よりも更にあぁしたいこうしたいのが出てくるよね。より音楽的になってきていると思う。今はさらにお互いの音を聴きながら「どうしよう?」っていう話がいっぱい出てくるし。すごく楽しいんだけどね。
“Flare”とか“Window Shopping”なんかは、自分で採譜してからスタジオ入ったんだけど、もう構成がすごく面倒くさくて(笑)。「こんなにガチガチなのかよ!」って。Takeshi:ガチガチに決まっているんだよね、あれは。
Atsuo:でもやってみたらめちゃめちゃ楽しくて。お互いの音を聴きながらその場で作り上げていくのもおもしろいんだけど、逆に“Flare”はゲームみたいな…。
Takeshi:タイムトライアルに近いよね。
Atsuo:そうそう「ここをクリア、次はここをクリア」みたいなね。そういうのもおもしろいんだなって。
Michio:今回同期を使わずに“Flare”をやるっていうのはどうなの?フィジカル的に楽しいとかはあるの?
Atsuo:それはやっぱり楽しいですね。当時は同期を使って、曲ごとにいろいろな“鳴り物”を出力して、俺がクリックを聴きながらドラムを叩いてたんだけど、今はそういうのをなしにしてて。
Michio:『New Album』の曲はほとんど同期を使ってたよね。
Atsuo:結構使ってました。“Looprider”、“Party Boy”、“Spoon”とかもね。
Michio:あのころはつらかったなぁ…。
一同:(笑)。
Michio:僕が最も苦手とする…。
Atsuo:「均等なプレイ」が一番苦手なんで、栗原さんは。
Michio:そう、均等なことが出来ないんで。
Atsuo:でも、そういうのがあったからこそ、今がより楽しいというか。
“Flare”は楽しい。好き。
<Special Interview vol.3 へ続く>
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